« 2006年06月 | メイン | 2006年08月 »

2006年07月28日

2006年度入試で最も使われた作品

 どうやら豪雨も日本列島から離れ、夏の暑い日差しが照りつけるようになりました。水害にあわれた地域の皆様には心よりお見舞い申し上げます。
 気がつけばもう夏休みです。この7月最後の土日はどこの大学もオープンキャンパスで大忙し・・・でしょう。私たちもようやく落ち着いて仕事ができるかな?といった状況になりました。今年度は、200校近い学校様から依頼を受け2000件を越える許諾処理を行いました。(現在進行中の案件もありますが・・・)
 今年一番使われた作品は何か受験生ならずとも気になるところです。あくまでも私たちが、許諾処理をさせていただいたデータですので全国の全大学のデータではありません。あしからずご了承ください。

作品ベスト10
『生きる意味』 上田紀行著
『「しきり」の文化論』 柏木博著
『ケータイを持ったサル』 正高信男著
『考えないヒト ケータイ依存で退化した日本人』 正高信男著
『異文化理解』 青木保著
『希望格差社会』 山田昌弘著
『日本人の歴史意識』 阿部謹也著
『問題な日本語』 北原保雄著
『10代の子どもが育つ魔法の言葉』 ドロシー・ロー/レイチャル・ハリス著 雨海弘美訳
『こころの処方箋』 河合隼雄著


が、ベスト10でした。
 『バカの壁』で常連だった養老孟司先生や『読書力』の齋藤孝先生、『ユーモアのレッスン』の外山滋比古先生は、著書がわかれてしまいベスト10に著書があがりませんでした。
 正高信男先生の作品が、2作品もベスト10入りしていますが、ケータイと言うキーワード=若者文化、コミュニケーション能力、情報リテラシーと社会学系の大学の先生方の研究テーマと合致しそうな言葉が浮かんできます。また山田昌弘先生の希望格差社会も社会問題であり、大学でも大きな問題であるニート問題を取り扱ってありこの上位はうなずけます。

著作者別ベスト10
外山滋比古先生 「読者の世界」ほか
河合隼雄先生 「おはなしおはなし」ほか
茂木健一郎先生 「脳のなかの文学」ほか
鷲田清一先生 「悲鳴をあげる身体」ほか
司馬遼太郎先生 司馬遼太郎の遺産「街道をゆく」ほか
養老孟司先生 「まともな人」ほか
内田 樹先生 「子どもは判ってくれない」ほか
山崎正和先生 「消費社会の『自我』の形成」ほか
リービ英雄先生 「詩を翻訳する少年」ほか
大岡 信先生 「抽象絵画への招待」ほか


となります。外山滋比古先生、河合隼雄先生は強いですね。必ず上位にランキングされています。
 最終結果は、また後日このブログで紹介いたします。

2006年07月07日

英語著作物の利用

 入試問題の二次利用で避けて通れないのが『英語の許諾をどうするか?』という問題です。私たちは、これまで基本的に日本語の著作物を中心に英語は著作(権)者が国内に在住する場合、あるいは国内に連絡先がある場合に限り対応するというスタンスをとってきました。
 実際には、要望があればエージェント経由で許諾を取るということもしてきましたが、時間も費用も桁はずれにかかりとても要望に応えられる仕組みを作るのは難しいというのが実感でした。
 何か良い方法はないものかと悩んでおりましたが、人材にも恵まれ、今年、試験的に直接海外の著作権管理団体や著作(権)者と直接コンタクトを取り許諾を取ることを試みました。国内では、様々な経験を積み対処方法を持ち合わせていても、海外での活動は手探りで、様々なトラブルがありましたが、ある程度満足のできる成果を得ることができました。近々に皆様にもご報告をと考えておりましたところ、トラブルの処理で時事通信社のご担当者様から貴重なお話を拝聴する機会を頂きました。
 詳細は、『英語著作物の留意点』として本ホームページに後日コーナーを設け紹介をしたいと考えておりますが、重要なポイントだけお伝えしておきます。
 時事通信社は、海外の通信社からのニュースを国内の新聞社や出版社、放送局などのマスメディアへ配信する会社ですが、「海外通信社→時事通信社→国内メディア」という流れの中に様々な契約があり『著作権法第36条』だけでは片付けられない商慣習が存在しているということです。
 ご存知のように、欧米は契約社会です。『著作権法36条』を成立させるためには、『出所の明示(48条1項三)』『同一性保持権(20条)』を遵守することが条件です。このことは、絶対条件として守って頂かなくては、二次利用はおろか、訴訟を起こされても仕方ありません。ページ数の都合や設問との関係での文章の省略、受験生のレベルに合わせての多少の改ざんはやむを得ないことですが、論旨自体を変えることは、明らかに著作権法に反します。
 時事通信社からの要望として、事前に入学試験に使う旨の連絡(具体的にどのTEXTを使うかではなく使うという包括的な意思表示)を頂きたいとのことです。たしかに著作権の制限として36条が定められていますが、あえて時事通信社が定める、利用の際の留意点 
1.掲載した新聞などの了解を得ている 
2.使用は申請分の一回限りとする 
3.内容を無断で変更しない 
4.掲載紙名と時事通信社のクレジット(『時事』『AFP jiji』等)を明記する 
を利用者にお伝えし、きちんとご理解頂いたうえで条件を守りご利用いただきたいとのことです。
これは、長年海外の通信社とCopyrightのやり取りをなされてきた同社が、言われることだけに無用な紛争や訴訟を回避する上でも重要なことだと思われます。
 実際、小会が海外著作物の許諾を進めるうえでトラブルとなるのは、『出所の明示』と『改ざん』です。これから問題作成に入られる時期かと思いますが、この点には十分留意して進めて頂きたいと存じます。

2006年07月06日

「国家の品格」藤原正彦著

 藤原正彦氏の「国家の品格」を読ませていただきました。私を含め多くの今の日本に違和感を感じる人たちに「そう、そうなんですよ、私が感じているのは!」と相づちを打ちながら読み進む一冊ではないかと思います。  グローバル化、国際化の言葉のもとに「日本らしさ」を置き去りに、いや捨て去ろうとする日本の姿を憂う藤原氏の言葉は、どれも大きな含蓄を持ち一つひとつに頷いてしまいました。人に個性を求めながら国家としての個性を捨て去ろうとする・・・・・  「卑怯」「惻隠」「ものの哀れ」「儚さ」といった言葉が、死語になりつつある現代社会。そうした言葉が随所に出てくるこの本は、私たちが忘れてしまった「生かされている」という私たちの存在そのものを再認識させてくれます。  そういえばノーベル平和賞受賞者でケニア環境副大臣のワンガリ・マータイさんが来日した際、「もったいない」という言葉を知って感銘を受け世界に「もったいない」を広げようとされているという記事を読んだことがありましたが、私たちは、こうしたすばらしい言葉を忘れてしまっています。 忘れる=思考から消える   すなわち文化の伝承がなされないということです。藤原正彦氏が同書の中で論じられているように、「英語教育の前に国語教育」(これは、英語の先生方も国語力がなければ、英語力は伸びないといわれます)です。  言葉と文化を大切にしたい。私は著作権という仕事を通して多くの方の著作に触れる機会をいただいていますが、学生の皆さんにも受験や試験のために出会ったすばらしい文章は是非その原作に触れていただきたいと思います。