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2007年11月30日

『サヨナライツカ』と『血と骨』

『サヨナライツカ』
 『サヨナライツカ』はおそらく皆さんも良くご存知の辻仁成さんの代表作のひとつです。作家でありミュージシャンでもある多才な方です。辻さんの作品は、登場人物のその場面での表情、服の色・デザイン、身に付けたアクセサリーから、指の動き、コーヒーカップの柄、コーヒーの味、そしてテーブルクロス、調度品、壁紙、カーテン、日差しの強さまで細やかな描写がなされ、彼の世界での出来事が展開します。この表現力は、辻さんにしか出来ない素晴らしいものです。まさに辻ワールドです。ただ、私は実のところ時々自分の持つイメージとの違いが出たときにこの細やかな描写が、かえって私の想像力の邪魔すると感じるときがありました。ところが、この『サヨナライツカ』は、辻さんと最後まで意見が一致した作品でした。(まあ、辻さんにしてみれば他の作品と同様な表現をなされたのでしょうけど・・・)
正直に書きますと、人生においてこんなに素晴らしい出会いと別れそして・・・。仕事においても順風満帆な人生はありえないでしょうけど。日々仕事で忙殺されながら人生の舵取りをいつも間違え、それでもこれが正しかったと自分に言い聞かせ、まもなく五十の大台に乗ろうとする私には、純粋に『いいなー』という感想。本当に自分が、この立場に立ったら大変な修羅場でしょうけど。振り返ると過去の切ない思い出がある人生、それは素晴らしい事ですね。

sayonara.gif
 『サヨナライツカ』辻仁成著 世界文化社刊


 『血と骨』

 『血と骨』は、映画化されビートたけしさんがの主演で話題になった梁石日(ヤン・ソギル)さんの作品です。私は、映画はあまり見ないのでこの映画も見ていません。暴力シーンが話題になりましたが、原作でもその描写は、本から血飛沫が飛び出しそうな(大げさでもなくほんとにそうです)迫力です。在日問題を取り上げたものかと思っていましたが、金俊平という済州島出身の男の壮絶な人生を描いたノンフィクションに近い小説です。戦前・戦中・戦後の大阪でその日生きることがぎりぎりの状況の下、この小説に出てくる人たちは、夢や目的もなく日々を生きている。その中で主人公の息子であり目撃者であり作者の目の前で繰り返される、酒と賭博と暴力の日々。なぜこうまでして生きていかなくてはならないのか読み進めば進む程解らなくなる。最後まで主人公の金俊平の心は見えない。振り回されながらも健気にいきえいる周りの人たちが、涙を誘う。そこまでしなければ、生きていけない時代だったのだろうか。

2007年11月24日

コンプライアンス

 ミートホープ社の事件以降、原材料、消費期限、原産地等々偽装事件が後を絶たない。幸いなことに食中毒などの被害が生じていないのでまだよかった。と考えながらそうした事故が起きていない事が、経営者や管理者に危機感を持たせない原因かもしれないという思いが頭をよぎる。また多くの経営者が、記者会見で最初に発する言葉が、現場の末端社員がやった事で会社ぐるみではないという責任逃れとも取れる発言である(記憶する限り、殆どが後々経営陣の指示である)。こうした発言を見るにつけ経営者の無責任振りが気になる。
 私とて他人を批判できるほどの聖人君子ではないが、自分が経営する会社で社員が失敗を犯し、お客様にご迷惑を掛ければ、当然のことながら管理者である私の責任であり、1社員に責任を押し付けることは考えられない。ところが、今問題になっている会社の殆どの経営者が平然と社員のせいにするのである。しかも不二家、赤福、船場吉兆どの会社も老舗のその業界のリーダー的な企業だ。
 安泰な経営の上に胡坐をかき社員の顔もお客の顔も見えなくなってしまったのか?いやいやそんなに単純な問題ではなさそうな気がする。
 今この国の舵取りをする人たち、例えば政治家・財界人・上級公務員、こうした人たちが、問題を起こし証人喚問や記者会見を行なうと何かしら『欺』あるいは『疑』を感じる。明らかな偽証として裁かれる場合もあるが疑いを持ちつつうやむやになることも多い。ひょっとしてこの国では、上に立つことは、上手に責任逃れが出来る人あるいはその術を身に着けることが条件なのかとさえ感じてしまう。
 私たち一般市民は、法律を守らなくてはならない。上に立つ人たちは、法律を作り、人を裁き、社会を作り、人を作る人たちである。法律以上に高い倫理観と使命感を持っていただきたい。幸い私がお会いする、大学教授や学校経営者、社長の多くは、そうした気概と高い理想をお持ちである。

 コンプライアンスとは、遵奉の精神である。それは、法律、家訓、信条であり自分自身の処世であろう。大切なことは、皆がどうしているかではなく、自分自身にとって正しいことであるか否かである。私たちは、自分自身の生き方に哲学を持たなくてはならない。

2007年11月06日

童話、童謡・詩、絵本コンクール表彰式

 11月3日の文化の日に、NPO法人みどりの会主催の第1回童話、童謡・詩、絵本コンクールの表彰式に参加させていただきました。
NPO法人みどりの会は、熊本を中心に「心豊かな青少年の育成」「国際交流の推進」「子育て支援」に関する事業を通じて教育環境に充実と社会全体の利益に寄与すること目的として活動されている非営利団体です。今回第1回の童話、童謡・詩、絵本コンクールを開かれ、その表彰式にお招き頂きました。
表彰式は、熊本市現代美術館5階のアートロフトという大変素晴らしい美術館の中で行われました。

表彰式のプログラムで「作者による朗読」が行われました。
何れの作品も大変素晴らしい作品ばかりでぜひみなさんにも読んで頂きたい作品でした。

入賞者と作品

●童話部門 
最優秀賞 子供の部 岡本花梨さん(熊本市立五福小学校4年) 「ナゾの金魚やさん」
最優秀賞 一般の部 松永明子さん 「レナとルナ」

優秀賞 子供の部 舛岡史織さん(熊本市立白川中学校1年) 「茜空と風船」
優秀賞 一般の部 永田恵美さん 「熊本城・妖怪、幽霊、その他いろいろ」

●童謡・詩部門 
優秀賞 宮崎時子さん 「秋の葉っぱ」
優秀賞 宮崎純一さん 「山登り」
優秀賞 岡田爽也さん 「みんな だいすき」
優秀賞 三好愛子さん 「肥後手まり」
優秀賞 佐藤緑さん   「うそっこだもん」

秋晴れの一日素晴らしい作品と出会え爽快な気分になりました。地方からこうした素晴らしい作品が生まれていくことが大切だと思います。文化力を高めることは、一朝一夕には出来ません。みどりの会のみなさんのような地道な活動が、いずれ大輪の花を咲かせるのだと思います。
会場を出ると熊本城の天守閣が、秋の夕日に照らし出されて堂々とそびえていました。