2025.10.6
2025年度の入試問題、とくに英語の出題に関して、出典著作物の改変に対する苦言が多数寄せられています。著作物の無断改変は、著作権者の人格権(同一性保持権)を侵害するおそれがあり、著作権法上も厳しく制限されています。
入学試験問題作成に関する著作権法第36条の権利制限規定は、著作物の「複製」に限って認められるものであり、原則として改変は認められていません。
違法に改変された問題は、著作権法第36条の適用対象外となり、著作権侵害として訴訟を提起される可能性もあります。
問題作成にあたっては、以下の点に十分注意し、著作権侵害とならぬようご留意ください。
■ 著作権法上の位置づけ
■ 許容される「やむを得ない改変」の範囲
以下のような出題上の技術的措置は、「やむを得ない改変」として、一定の条件下で許容されると解されています。
これらの措置は、いずれも正答によって原文に戻ることが可能な範囲にとどめる必要があります。
内容の本質的変更や、著作物の意図を損なうような改変は、いかなる理由があっても違法と見なされる可能性があります。
■ 特に注意すべき英語問題の改変例
「受験生の習熟度」を理由に語句を置き換えることは、原則として認められません。
→ 必要があれば、脚注で注釈を加えるなどの方法で対応してください。
著作者の表現を改変することになり、人格権の侵害に該当する可能性があります。
もし、出題に不適切な構文を含む著作物である場合は、改変によって調整するのではなく、他の適切な著作物を選定すべきです。
<法的根拠(抜粋)>
<関連条文>---------------------------------------------------------------------------------------------
(同一性保持権)
第二十条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない。
一 第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項又は第三十四条第一項の規定により著作物を利用する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの
二 建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変
三 特定の電子計算機においては利用し得ないプログラムの著作物を当該電子計算機において利用し得るようにするため、又はプログラムの著作物を電子計算機においてより効果的に利用し得るようにするために必要な改変
四 前三号に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変
(昭六〇法六二・2項三号追加四号一部改正、平十五法八五・2項一号一部改正)
(試験問題としての複製等)
第三十六条 公表された著作物については、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、当該試験又は検定の問題として複製し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。次項において同じ。)を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
2 営利を目的として前項の複製又は公衆送信を行う者は、通常の使用料の額に相当する額の補償金を著作権者に支払わなければならない
(平十五法八五・見出し1項2項一部改正)
(翻訳、翻案等による利用)
第四十七条の六 次の各号に掲げる規定により著作物を利用することができる場合には、当該著作物について、当該規定の例により当該各号に定める方法による利用を行うことができる。
一 第三十条第一項、第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十四条第一項、第三十五条第一項又は前条第二項 翻訳、編曲、変形又は翻案
二 第三十条の二第一項又は第四十七条の三第一項翻案
三 第三十一条第一項第一号若しくは第三項後段、第三十二条、第三十六条第一項、第三十七条第一項若しくは第二項、第三十九条第一項、第四十条第二項、第四十一条又は第四十二条 翻訳
四 第三十三条の二第一項、第三十三条の三第一項又は第四十七条変形又は翻案
五 第三十七条第三項翻訳、変形又は翻案
六 第三十七条の二 翻訳又は翻案
2 前項の規定により創作された二次的著作物は、当該二次的著作物の原著作物を同項各号に掲げる規定(次の各号に掲げる二次的著作物にあつては、当該各号に定める規定を含む。以下この項及び第四十八条第三項第二号において同じ。)により利用することができる場合には、原著作物の著作者その他の当該二次的著作物の利用に関して第二十八条に規定する権利を有する者との関係においては、当該二次的著作物を前項各号に掲げる規定に規定する著作物に該当するものとみなして、当該各号に掲げる規定による利用を行うことができる。
一 第四十七条第一項の規定により同条第二項の規定による展示著作物の上映又は自動公衆送信を行うために当該展示著作物を複製することができる場合に、前項の規定により創作された二次的著作物同条第二項
二 前条第二項の規定により公衆提供提示著作物について複製、公衆送信又はその複製物による頒布を行うことができる場合に、前項の規定により創作された二次的著作物同条第一項
(平二十一法五三・追加、平三〇法三〇・全改、平三〇法三九・1項四号一部改正)
(著作者人格権との関係)
第五十条 この款の規定は、著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない。