2009法改正

どう変わる?法改正と過去問二次利用


法改正の3つの柱

1.いわゆる『写り込み』(付随対象著作物の利用)等に係る規定の整備


様々な社会的要請を踏まえ、権利者の許諾なく次の行為を行えるようにする。


  • インターネットでの情報検索サービス(Yahoo!やGoogle)に伴う、情報の収集、整理・解析、検索結果の表示が、著作権法に抵触する可能性があり、日本国内にサーバーを設置できない。

    「情報大航海プロジェクト(経済産業省)」を推進する観点からも、検討の要請がある。


    法改正によって・・・

    情報検索サービスに必要な行為は、著作権者の許諾を得なくても可能とすることを明確化する。ただし、次の条件を付する。


    1.権利者がネット上で情報収集を拒否する旨の意思表示を行っている場合は、当該情報を収集しない。

    2.サービス事業者が違法複製物の存在を知った場合、その表示を停止する。

    インターネット情報の検索サービスを実施するための複製等に係る権利制限

    インターネット情報の検索サービスを業として行う者(政令で定める基準を満たす者に限る。)が,当該サービスを提供するために必要と認められる限度で行う複製等について,違法に送信可能化されていた著作物であることを知ったときはそれを用いないこと等の条件の下で,権利制限を認める。(第47条の6関係)


    政令で定める基準とは・・・

    1.省令委任事項

    法第47条の6では、「政令で定める基準」に従う者に限って情報検索サービスを実施するための複製等を行うことを認める旨規定。
    → 業者個別許可ではなく「政令で定める基準」に従う者ならOK


    政令案では、政令で定める基準の一つとして、「文部科学省令で定める方法」に従い情報検索サービス事業者による情報の収集を禁止する措置がとられた情報を収集しないことを規定。
    → 基準は「文部科学省令で定める方法」


    2.改正内容

    「文部科学省令で定める方法」として、次に掲げる行為のいずれかを、情報検索サービス事業者による情報の収集を禁止する措置についての一般の慣行に従って行うことを定める。


    i. 送信可能化された情報でrobots.txtの名称の付されたものに次の事項を記載すること。

    情報検索サービス事業者による情報の収集のためのプログラムのうち情報の収集を禁止するもの

    情報検索サービス事業者による収集を禁止する情報の範囲


    ii. 送信可能化された情報でHTMLで作成されたものに、情報検索サービス事業者による情報の収集を禁止する旨を記載すること。

    権利制限である。
    公開されたくない情報は、権利者が自己防衛する。

    1‐A まとめ

    権利制限=サイト運営者が自己防衛する。



    違法複製を発見したら・・・

    直ちに公開を停止しなければならない。


  • 権利者不明の場合の利用の円滑化

    過去に放送されたテレビ番組等をインターネットで二次利用する場合、著作権者や実演家(俳優)が所在不明であるなどの理由で許諾が得られないことが阻害要因であり、まずこの点を解決すべきとの指摘。

    法改正によって・・・

    1.実演家の所在不明の場合にも、裁定制度を利用できるようにする。

    2.裁定申請の際に供託金を供託すれば、裁定結果が出る前でも暫定的な利用を認める。

    1.著作隣接権者不明等の場合の裁定制度の創設

    著作権者について設けられている第67条の裁定制度と同様の制度を,著作隣接権者の不明等の場合についても創設する。(第103条関係)


    2.裁定申請中の利用を認める新制度の創設

    権利者捜索の相当の努力をした上で,権利者不明等の場合における裁定の申請を行い,かつ,あらかじめ文化庁長官の定める額の担保金を供託した場合には,裁定又は裁定をしない処分を受けるまでの間(それまでに権利者と連絡することができた場合は,それまでの間),著作物等を利用することができる。(第67条の2及び第103条関係)

    著作隣接権者不明等の場合の裁定制度

    1.告示委任事項

    今般の法改正により、文化庁長官の裁定を受ける前であっても、長官の定める使用料相当額の担保金を事前に供託した上で著作物を利用することができる「申請中利用制度」を創設したこと等に伴い、「相当な努力を払っても著作権者と連絡することができない場合」の内容等について政令で定めることとされた。


    これを受け、著作権法施行令の一部を改正する政令案(以下「政令案」)では、以下の方法のすべてにより権利者と連絡するために必要な情報(氏名、住所等。以下「権利者情報」)を得ようとしたにもかかわらず得られなかった場合又は当該方法により得られた情報その他その保有するすべての情報に基づき権利者と連絡をしようとしたにもかかわらず連絡ができなかった場合を規定。


    ア、広く権利者情報を掲載していると認められるものとして文化庁長官が定める刊行物その他の資料を閲覧すること

    イ、著作権等管理事業者その他の広く権利者情報を保有していると認められる者として文化庁長官が定める者へ照会すること

    ウ、日刊新聞紙への掲載その他これに準ずるものとして文化庁長官が定める方法により、公衆に対して広く権利者の情報提供を求めること。

    著作隣接権者不明等の場合の裁定要件を規定する内容

    2.告示で規定する内容

    1.広く権利者情報を掲載していると認められるものとして文化庁長官が定める刊行物その他の資料(ア関係)

    文化庁長官が定める刊行物その他の資料は、次に掲げるもののすべてとする。


    1.著作物、実演、レコード、放送又は有線放送の種類に応じて作成された名簿その他これに準ずるもの(例:美術年鑑、レコード年鑑、著作権台帳等)

    2.広くウェブサイトの情報を検索する機能を有するウェブサイト

    3.過去に裁定を受けた著作物等に関するデータベースの閲覧(平成28年追加)


    2.著作権等管理事業者その他の広く権利者情報を保有していると認められる者として文化庁長官が定める者(イ関係)

    文化庁長官が定める者は、次に掲げるもののすべてとする。


    1.著作権等管理事業者その他の著作権等の管理を業として行う者であって、裁定を受けて利用しようとする著作物等と同じ種類の著作物等(以下「同種著作物等」という。)を取り扱うもの

    2.同種著作物等を業として公衆に提供し、又は提示する者(例:出版社、レコード会社等)

    3.同種著作物等について識見を有する者を主たる構成員とする法人その他の団体(例:学会、著作者団体等)

    4.過去に裁定を受けた著作物等に関するデータベースを保有する文化庁への照会(平成28年追加)


    3.時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙への掲載その他これに準ずるものとして文化庁長官が定める方法(ウ関係)

    文化庁長官が定める方法は、社団法人著作権情報センターのウェブサイトに7日以上の期間継続して掲載することとする。(30日以上から7日以上へ短縮 平成28年改定)

    権利者不明調査の基準

    ア関係)独力での調査

    まず過去に裁定を受けた著作物等に関するデータベースの閲覧、無ければ各種年鑑、著作権台帳等 ウェブサイトで検索


    イ関係)関連団体等への調査協力依頼

    まず過去に裁定を受けた著作物等に関するデータベースを保有する文化庁への照会。無ければ、著作権等管理事業者 学会、著作者団体等 出版社、レコード会社等


    ウ関係)インターネットによる告知

    社団法人著作権情報センター ウェブサイト 7日以上の期間継続して掲載


    裁定のためのポイント その1

    対象となる著作物

    1.著作権者の了解を得て既に「公表」されている著作物

    著作権者の了解を得て公衆向けに「出版」、「上演」、「演奏」、「上映」、「放送・有線放送」、「インターネット等での送信」、「口述」、「展示」、「貸与」などが既に行われているもの


    2.著作権者の了解を得ているかどうか不明であるが、相当の期間にわたって世間に流布されている著作物

    相当の期間にわたり「出版」、「上演」、「演奏」、「上映」、「放送・有線放送」、「インターネット等での送信」、「口述」、「展示」、「貸与」などが行われているもの


    裁定のためのポイント その2

    文化庁への相談

    裁定の申請の条件として「相当な努力を払ってもその著作権者と連絡することができないこと」が必要である。調査不足で受理されないこともあるので文化庁と相談の上すすめることが肝要。


    申請書の提出

    定型書式は無いが、文化庁ホ-ムページに記載例がある。この記載例を参考に作成するとよい。(申請書に申請にかかる手数料(13,000円)を添付し納付する)


    補償金の額の決定

    補償金額の算定は、印刷物なら部数・売価、全体に対する分量、業界の標準料金、著作権等管理事業者の使用料規定等から算出し、資料としてそれらの複写を添付する。


    裁定の可否の決定

    申請が受理されれば2~3週間で裁定される。(予定)

    裁定著作物の権利者と連絡がとれた場合

    対応 補償金の支払 その他
    裁定申請中に連絡が取れた場合 当事者間で裁定申請期間の補償金額を協議する。
    その後の利用は、裁定とは関係なく通常の使用として権利者に利用申請。
    担保金から補償金を支払う
    不足分があれば申請者が追加して支払う
    裁定決定後に連絡が取れた場合 当事者間で補償金額を協議する。 担保金から補償金を支払う
    不足分があれば申請者が追加して支払う
    裁定申請中に使用していて、「裁定しない決定後」に連絡が取れた場合 当事者間で裁定申請期間の補償金額を協議する。 担保金から補償金を支払う
    不足分があれば申請者が支払う
    裁定著作物の再利用 新たに裁定の申請 担保金を預託

    裁定制度利用の流れ

  • 出版物を網羅的に収集し保存するという国立国会図書館の役割を踏まえ、所蔵資料が傷む前に電子化し、原資料を文化的遺産として保存できるようにすることが重要である。

    現行法では、現に損傷・劣化した資料の保存のための電子化のみ可能だが、新刊については法整備が必要である。


    法改正によって・・・

    国立国会図書館においては、所蔵資料を納本後直ちに電子化できることとする。

    (閲覧やコピーサービスの運用は出版業界の意見も踏まえ、適切にルール化)


    所蔵資料が傷む前に電子化し、原資料を文化的遺産として保存する

    閲覧やコピーサービスの運用は、今後ルール化

  • インターネット販売等での美術品等の画像掲載に係る権利制限

    美術又は写真の著作物の譲渡等の申出のために行う商品紹介用画像の掲載等(複製及び自動公衆送信)について,著作権者の利益を不当に害しないための政令で定める措置を講じるとの条件の下で,権利制限が認められた。(第47条の2関係)


    情報解析研究のための複製等に係る権利制限

    コンピュータ等を用いた情報解析のために行われる複製等について,権利制限が認められた。(第47条の7関係)


    電子計算機利用時に必要な複製に係る権利制限

    コンピュータ等において著作物を利用する場合における当該コンピュータ等による情報処理の過程で行われる複製について,権利制限が認められた。(第47条の8関係)


    その他(インターネット販売等での美術品等の画像掲載に必要な複製)

    1.省令委任事項

    法第47条の2では、「著作権者の利益を不当に害しないための措置として政令で定める措置」を講じている場合には、美術品や写真の譲渡又は貸与をするために商品紹介用の画像掲載を認める旨規定。

    政令案では、「政令で定める措置」として、以下のいずれかの措置を講じていることを規定。

    ア、画像を文部科学省令で定める基準に適合する大きさ又は精度にすること。

    イ、画像のインターネット送信を行う際に、電磁的方法により複製を防止する手段(コピープロテクション)をかけ、かつ、画像の精度がアの基準より緩やかなものとして文部科学省令で定める基準に適合するようにすること。


    2.改正内容

    アの基準は、著作物の表示の大きさ又は精度が、譲渡若しくは貸与をしようとする著作物の原作品若しくは複製物の大きさ又はこれらに係る取引の態様その他の事情に照らし、これらの譲渡又は貸与の申出のために必要な最小限度のものであり、かつ、公正な慣行に合致するものであると認められることとする。

    政令案では、「政令で定める措置」として、以下のいずれかの措置を講じていることを規定。


    著作物の表示の大きさ又は精度が、必要な最小限度のものであり、かつ、公正な慣行に合致することが条件

    必要以上のサイズ・解像度は違法!

    その他(情報解析研究のための複製等に係る権利制限)

    コンピュータ等を用いた情報解析のために行われる複製等について,権利制限を認める。(第47条の7関係)

    ※情報解析技術には,例えば,画像・音声・言語・ウェブ解析技術等の分野があり,いずれもデジタル・ネットワーク社会の基盤的な技術として,本人認証,自動翻訳,社会動向調査,情報検索等,随所に用いられてきている。
    情報解析の過程では,情報をコンピュータに蓄積した上で,必要な情報を整理し,抽出すること等が行われているが,これらの行為は,著作物の表現そのものの効用を享受する目的で行われるものではなく,情報を収集し,統計的に処理する目的で行われるものである。


    したがって,権利者の権利を保護すべき著作物利用としての実質を備えないものであると考えられる。


    その他(電子計算機利用時に必要な複製に係る権利制限)

    ワープロソフトを用いた文書や,ブラウザを用いたウェブサイトの視聴など,電子機器を用いた著作物の利用が広範に行われている。

    このような利用の際に電子機器内部の技術的過程で生じる情報の蓄積について,これが複製に当たるかどうか関係者間で判断が分かれて混乱が生じかねない状態にある。


    本改正は,通常の電子機器使用に萎縮効果を与えないよう,このような蓄積が問題とならないことを著作権法上明確化するものである。


    その他(電子計算機利用時に必要な複製に係る権利制限)

    YouTube等でムービーを見る際に作成されるキャッシュファイルは合法化。

    キャッシュをキャッシュフォルダ(記憶装置上でキャッシュが作成・格納される領域)から取り出して別のソフトウェアにより視聴したり,別の記録媒体に保存したりするような場合については,この例外規定は適用されず,著作権が及ぶものと考えられる。(第49条)

参考資料

文部科学省・文化庁

著作権法の一部を改正する法律

著作権法の一部を改正する法律 新旧対照条文

著作権法施行規則の一部を改正する省令案の概要

著作権法施行令の一部を改正する政令案に基づく文化庁告示案の概要

著作権法施行令の一部を改正する政令案の概要

文化庁ホームページ 平成21年通常国会著作権法改正について

著作権法の一部を改正する法律の概要

文化庁ホームページ 著作権者不明等の場合の裁定制度

著作物利用の裁定申請の手引き


内閣府

経済財政改革の基本方針 2007 ~「美しい国」へのシナリオ~


経済産業省

情報大航海プロジェクトホームページ及びパンフレット



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