2012法改正

平成24年(2012年)法改正


4.著作権等の技術的保護手段に係る規定の整備


平成11年に整備された、技術的保護手段の規定は、当時、家庭用録画再生機の主流であったVHS方式を主眼においた『信号付加方式』を対象としたものであった。規定の整備から10年以上の月日が経ち、現在は、DVDやハードディスクによる録画再生機の主流となりプロテクト方法も『暗号化』へと変わった。


  • DVD等の暗号化による保護が対象外では、著作権者の権利が保護できない


    法改正によって・・・

    いわゆるリッピングに関する立法である。これまで、VHS等に使われている信号付加方式に加え暗号化方式のコピガードも規制対象に加えることとなる。ただし、業として行う以外は、違法ではあるが刑事罰は科さない。リッピング自体は、デジタル・ネットワーク社会の発展において欠くことのできない技術である。本法改正で規制されるのは、記録媒体用のCSSやAACS、衛星放送のB-CAS方式等に利用される暗号型技術である。


    法改正のポイント・・・

    1.違法とされる行為

    暗号化の解除により本来できないはずの複製を可能にする


    2.規制の内容

    違法複製・配布を業として行った場合は刑事罰(三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金)

    私的利用目的であっても、技術的保護を施されたDVDや衛星放送等の保護を回避し複製することは違法となる。

    関係する条文(赤字部分は改正部分)

    第2条(定義)

    この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

    一~三(略)

    四 実演家俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。

    五 レコード蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。

    六~八(略)

    九 放送事業者放送を業として行う者をいう。

    十~十九(略)

    二十 技術的保護手段電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法(次号において「電磁的方法」という。)により、第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権又は第八十九条第一項に規定する実演家人格権若しくは同条第六項に規定する著作隣接権(以下この号、第三十条第一項第二号及び第百二十条の二第一号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。第三十条第一項第二号において同じ。)をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(次号において「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行つたとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

    二十一~二十三(略)

    2~9(略)

    第30条(私的使用のための複製)

    著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

    一(略)

    二 技術的保護手段の回避(第二条第一項第二十号に規定する信号の除去若しくは改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うこと又は同号に規定する特定の変換を必要とするよう変換された著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像の復元(著作権等を有する者の意思に基づいて行われるものを除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となる複製、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合。

    三(略)

    2(略)

    第120条の2関係

    次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

    一 技術的保護手段の回避を行うことをその機能とする装置(当該装置の部品一式であつて容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは技術的保護手段の回避を行うことをその機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し、若しくは貸与し、公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもつて製造し、輸入し、若しくは所持し、若しくは公衆の使用に供し、又は当該プログラムを公衆送信し、若しくは送信可能化する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあつては、著作権等を侵害する行為を技術的保護手段の回避により可能とする用途に供するために行うものに限る。)をした者。

    二~四(略)


5.違法ダウンロード刑事罰化に係る規程の整備


平成21年著作権法の一部改正により、私的使用であっても、違法にアップロードされたものと知りながら、権利者に無断で、音楽、映像をダウンロードする行為は違法となった。しかし,その後も違法ダウンロードは後を絶たず違法ダウンロードが正規ダウンロードを上回る状況が続いている。


  • 違法サイトからの私的ダウンロードを違法としたが、違法ダウンロードが減らない

    レコード業界、映画業界に対する被害が甚大である


    法改正によって・・・

    本改正著作権法で最も話題となった条文である。平成21年の著作権法改正で違法とされた「私的使用であっても、違法にアップロードされたものと知りながら、権利者に無断で、音楽、映像をダウンロードする行為を違法に。ただし刑事罰は無し。(第30条第1項第3号)」に刑事罰を科すこととなった。

    本条文では、有償の著作物と限定されており、CDやDVDとして販売されている、あるいは有料でインターネット配信されている楽曲や映画等の正規サイト以外のサイトからのダウンロードがその対象となる。有償の著作物が対象となるためDVD販売や有料でのネット配信がなされていないテレビ番組や個人が無償で公開しているプライベートビデオ等は、今回刑事罰の対象とはならない。


    法改正のポイント・・・

    1.刑罰の対象となる行為

    違法と知りながらのダウンロード

    自動公衆送信(インターネット)を利用したデジタル方式の録音または録画

    有償で販売あるいは配布されている著作物での音楽や動画、映画の著作物が対象


    2.法定刑

    2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、またはこれの併刑
    (新設された第119条第3項については、第123条により親告罪とされた)

    私的利用であっても、違法にアップロードされた著作物と知ったうえでのダウンロードには刑事罰が適用される。

    関係する条文(赤字部分は改正部分)

    第119条

    著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第五項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第四号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

    2(略)

    3 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

参考資料

文化庁

平成24年通常国会 著作権法改正について

著作権法の一部を改正する法律

著作権法の一部を改正する法律 新旧対照条文

著作権法の一部を改正する法律 概要




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