2012法改正

平成24年(2012年)法改正


2.国立国会図書館による図書館資料の自動公衆送信に係る規定の整備


国立国会図書館は、平成21年の法改正で所蔵資料の電子化が認められ、膨大な電子資料が蓄積されている。このデジタル化された資料の有効な活用が求められているが、インターネット等を活用した利用方法が定められていなかった。

高速通信網が整備され本格的なデジタル・ネットワーク社会が実現されつつある今、知の集積である過去の出版物の電子化よる保存と国民が遍くアクセスできる環境の整備が必要である。


  • 国立国会図書館の電子化された膨大なデジタル資料が活用されていない

    国立国会図書館へ行かなければ閲覧出来ず、地方から利用ができない


    法改正によって・・・

    今回の法改正では絶版本等一部制限はあるが、公立図書館、大学図書館等からインターネットによる資料の閲覧とプリントアウトが可能になる。絶版本等の規制があるものの研究資料の入手において一歩前進したといえる。公開範囲の拡大には、電子書籍市場に大きな影響を及ぼすことが考えられるため、今後の市場の行方を見ながら検討されることとなろう。


    法改正のポイント・・・

    1.送信先および利用形態

    公立図書館、大学図書館での閲覧、一部複製


    2.対象出版物の範囲

    市場で入手困難ないわゆる絶版本あるいはこれに準ずる資料

    一人につき一部を提供することができる

    これまで入手困難な資料が、大学図書館でダウンロードできるようになる。

    関係する条文(赤字部分は改正部分)

    第31条(図書館等における複製等

    国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(以下この項及び第三項において「図書館等」という。)においては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料(以下この条において「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製することができる。

    一 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物にあつては、その全部。第三項において同じ。)の複製物を一人につき一部提供する場合

    二(略)

    三 他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料(以下この条において「絶版等資料」という。)の複製物を提供する場合

    2 前項各号に掲げる場合のほか、国立国会図書館においては、図書館資料の原本を公衆の利用に供することによるその滅失、損傷若しくは汚損を避けるために当該原本に代えて公衆の利用に供するため、又は絶版等資料に係る著作物を次項の規定により自動公衆送信(送信可能化を含む。同項において同じ。)に用いるため、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十三条の二第四項において同じ。)を作成する場合には、必要と認められる限度において、当該図書館資料に係る著作物を記録媒体に記録することができる。

    3 国立国会図書館は、絶版等資料に係る著作物について、図書館等において公衆に提示することを目的とする場合には、前項の規定により記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて自動公衆送信を行うことができる。この場合において、当該図書館等においては、その営利を目的としない事業として、当該図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、自動公衆送信される当該著作物の一部分の複製物を作成し、当該複製物を一人につき一部提供することができる。


3.公文書等の管理に関する法律等に基づく利用に係る規定の整備


国立公文書館においては、公文書管理法第16条で「国民から重要な公文書等の利用請求があった場合、原則として、写しの交付によってこれを利用させなければならない」と定められているが、写しの交付(複製)には、著作権者の許諾が必要である。また、公文書館理法第15条では、電子化による永久保存が定められているが、複製のためには著作権者の許諾が必要である。


  • 国立公文書館に保存されている公文書等の複製には、著作権者の許諾が必要

    未公表の著作物の場合は、公表するために著作権者の同意が必要

    保存のための電子化(複製)について、著作権者の許諾が必要


    法改正によって・・・

    法改正では、著作権者の公表権、複製権等に対し権利制限を行い、著作権者の承諾無しに請求者に対し、写しの交付を可能とする。また、永久保存のための電子化についても複製権の制限によって可能とした。本条文もNDL同様に貴重な研究資料の入手において大きく前進したといえる。

    公文書等管理に関する法律に基づく新たな制限規定とは・・・

    1.利用請求に関する規定の整備

    写しの交付等について、著作権者の公表権、複製権等を制限
    (※行政機関情報公開法等に基づく開示につき、同様の権利制限規定あり)


    2.永久保存のための規定の整備

    永久保存のため、著作権者の複製権を制限

    公文書の入手手続きの簡素化、スピードアップが期待できる。

    関係する条文(赤字部分は改正部分)

    第18条(略)

    (略)

    2(略)

    3 著作者は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる行為について同意したものとみなす。

    一 その著作物でまだ公表されていないものを行政機関(行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号。以下「行政機関情報公開法」という。)第二条第一項に規定する行政機関をいう。以下同じ。)に提供した場合(行政機関情報公開法第九条第一項の規定による開示する旨の決定の時までに別段の意思表示をした場合を除く。) 行政機関情報公開法の規定により行政機関の長が当該著作物を公衆に提供し、又は提示すること(当該著作物に係る歴史公文書等(公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号。以下「公文書管理法」という。)第二条第六項に規定する歴史公文書等をいう。以下同じ。)が行政機関の長から公文書管理法第八条第一項の規定により国立公文書館等(公文書管理法第二条第三項に規定する国立公文書館等をいう。以下同じ。)に移管された場合(公文書管理法第十六条第一項の規定による利用をさせる旨の決定の時までに当該著作物の著作者が別段の意思表示をした場合を除く。)にあつては、公文書管理法第十六条第一項の規定により国立公文書館等の長(公文書管理法第十五条第一項に規定する国立公文書館等の長をいう。以下同じ。)が当該著作物を公衆に提供し、又は提示することを含む。)

    二 その著作物でまだ公表されていないものを独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成十三年法律第百四十号。以下「独立行政法人等情報公開法」という。)第二条第一項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)に提供した場合(独立行政法人等情報公開法第九条第一項の規定による開示する旨の決定の時までに別段の意思表示をした場合を除く。) 独立行政法人等情報公開法の規定により当該独立行政法人等が当該著作物を公衆に提供し、又は提示すること(当該著作物に係る歴史公文書等が当該独立行政法人等から公文書管理法第十一条第四項の規定により国立公文書館等に移管された場合(公文書管理法第十六条第一項の規定による利用をさせる旨の決定の時までに当該著作物の著作者が別段の意思表示をした場合を除く。)にあつては、公文書管理法第十六条第一項の規定により国立公文書館等の長が当該著作物を公衆に提供し、又は提示することを含む。)

    三 その著作物でまだ公表されていないものを地方公共団体又は地方独立行政法人に提供した場合(開示する旨の決定の時までに別段の意思表示をした場合を除く。) 情報公開条例(地方公共団体又は地方独立行政法人の保有する情報の公開を請求する住民等の権利について定める当該地方公共団体の条例をいう。以下同じ。)の規定により当該地方公共団体の機関又は地方独立行政法人が当該著作物を公衆に提供し、又は提示すること(当該著作物に係る歴史公文書等が当該地方公共団体又は地方独立行政法人から公文書管理条例(地方公共団体又は地方独立行政法人の保有する歴史公文書等の適切な保存及び利用について定め る当該地方公共団体の条例をいう。以下同じ。)に基づき地方公文書館等(歴史公文書等の適切な保存及び利用を図る施設として公文書管理条例が定める施設をいう。以下同じ。)に移管された場合(公文書管理条例の規定(公文書管理法第十六条第一項の規定に相当する規定に限る。以下この条において同じ。)による利用をさせる旨の決定の時までに当該著作物の著作者が別段の意思表示をした場合を除く。)にあつては、公文書管理条例の規定により地方公文書館等の長(地方公文書館等が地方公共団体の施設である場合にあつてはその属する地方公共団体の長をいい、地方公文書館等が地方独立行政法人の施設である場合にあつてはその施設を設置した地方独立行政法人をいう。以下同じ。)が当該著作物を公衆に提供し、又は提示することを含む。)

    四 その著作物でまだ公表されていないものを国立公文書館等に提供した場合(公文書管理法第十六条第一項の規定による利用をさせる旨の決定の時までに別段の意思表示をした場合を除く。) 同項の規定により国立公文書館等の長が当該著作物を公衆に提供し、又は提示すること。

    五 その著作物でまだ公表されていないものを地方公文書館等に提供した場合(公文書管理条例の規定による利用をさせる旨の決定の時までに別段の意思表示をした場合を除く。) 公文書管理条例の規定により地方公文書館等の長が当該著作物を公衆に提供し、又は提示すること。

    4 第一項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。

    一・二(略)

    三 情報公開条例(行政機関情報公開法第十三条第二項及び第三項の規定に相当する規定を設けているものに限る。第五号において同じ。)の規定により地方公共団体の機関又は地方独立行政法人が著作物でまだ公表されていないもの(行政機関情報公開法第五条第一号ロ又は同条第二号ただし書に規定する情報に相当する情報が記録されているものに限る。)を公衆に提供し、又は提示するとき。

    四・五(略)

    六 公文書管理法第十六条第一項の規定により国立公文書館等の長が行政機関情報公開法第五条第一号ロ若しくはハ若しくは同条第二号ただし書に規定する情報又は独立行政法人等情報公開法第五条第一号ロ若しくはハ若しくは同条第二号ただし書に規定する情報が記録されている著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、又は提示するとき。

    七 公文書管理条例(公文書管理法第十八条第二項及び第四項の規定に相当する規定を設けているものに限る。)の規定により地方公文書館等の長が著作物でまだ公表されていないもの(行政機関情報公開法第五条第一号ロ又は同条第二号ただし書に規定する情報に相当する情報が記録されているものに限る。)を公衆に提供し、又は提示するとき。

    八 公文書管理条例の規定により地方公文書館等の長が著作物でまだ公表されていないもの(行政機関情報公開法第五条第一号ハに規定する情報に相当する情報が記録されているものに限る。)を公衆に提供し、又は提示するとき。

    第42条の3
    (公文書管理法等による保存等のための利用)

    国立公文書館等の長又は地方公文書館等の長は、公文書管理法第十五条第一項の規定又は公文書管理条例の規定(同項の規定に相当する規定に限る。)により歴史公文書等を保存することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、当該歴史公文書等に係る著作物を複製することができる。

    2 国立公文書館等の長又は地方公文書館等の長は、公文書管理法第十六条第一項の規定又は公文書管理条例の規定(同項の規定に相当する規定に限る。)により著作物を公衆に提供し、又は提示することを目的とする場合には、それぞれ公文書管理法第十九条(同条の規定に基づく政令の規定を含む。以下この項において同じ。)に規定する方法又は公文書管理条例で定める方法(同条に規定する方法以外のものを除く。)により利用をさせるために必要と認められる限度において、当該著作物を利用することができる。

参考資料

文化庁

平成24年通常国会 著作権法改正について

著作権法の一部を改正する法律

著作権法の一部を改正する法律 新旧対照条文

著作権法の一部を改正する法律 概要


国立国会図書館

改正国立図書館法によるインターネット資料の収集について



◀︎ 前のページ  次のページ︎ ▶


Page Top